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「こんなとき、どうする?」

Situation(4):「散骨」

 
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 ばあちゃんが死んだ。
 雲ひとつない真っ青な秋空を見上げると、白く細い一筋の煙が、長く高い煙突からあがっていくのが見えた。ばあちゃんは天国へと向かっているのだろうか。
「シンちゃんはおばあちゃん子だったからね、さびしいよね」
 火葬場から帰ってくる途中のバスの中で、親戚のおばちゃんから言われた。
「そうそう、仲良かったよね。よく2人で話してたし」
 かあちゃんが振り向いて言う。
 その言葉で思い出した。ばあちゃんから聞いていた話を。

 ばあちゃんは足腰が弱くなってからも、一人暮らしをしていた。人の世話になるということに、すごく抵抗を感じていたらしい。
 俺はよく田舎のばあちゃんの家に遊びに行った。元気な頃のばあちゃんはオシャレでテキパキした人で、
「ばあちゃんが今の時代に生まれていたら、仕事バリバリして、家庭の中だけの人にはならなかったなあ」
 って言ってた。
「働いて自立してさ、自由に生きたかったなあ」
 ばあちゃんは結婚してからお姑さんにずいぶんいじめられてきたようだった。
 だからばあちゃんは俺に言ってたんだ。
「死んだら、あの人と一緒のお墓の中には入りたくない」
 って。
「散骨、って知ってる?」
 ばあちゃんは俺に訊いた。俺が首を振ると、
「死んだ後くらいは、ばあちゃんは自由になりたいなあ。そうだねえ、ばあちゃんは海が好きだから、ばあちゃんのお骨はお墓に入れるんじゃなくて、海にまいて欲しいなあ」
 ばあちゃんは俺を見て、にっこり笑った。
 このときの俺には、ばあちゃんの死なんて遠すぎたから、ぴんとこなかった。そしてその後、ばあちゃんとこの話をしたことはなかった。

「散骨って知ってる?」
 家に帰って、台所で炊事をしていたかあちゃんに声をかけた。
「え? なに言ってんの? いきなり」
「ばあちゃんがさ、前に言ってたんだ。死んだらお墓には入りたくないって。海にお骨をまいて欲しいって」
 かあちゃんはあからさまに嫌な顔をした。
「ばあちゃんったら、シンが子供だと思って、そんなこと吹き込んで。シンはわからないのかもしれないけど、死んだらお墓に入る、これは常識なの。散骨なんて出来るわけないでしょ。それに海にまくなんてみっともない。ばあちゃんのお骨はお墓に入れます。以上」
 取り付く島もなかった。

 俺は仏壇の前に座って、ばあちゃんの遺影を見つめた。
 ばあちゃん……、墓に入りたくないか? 自由になりたいか?
 きっとばあちゃんは俺にだけ散骨のことを言っていたんだ。だから、俺が行動を起こさなければ、ばあちゃんはこのまま墓の中に入れられてしまう。
 手が届くところに、白い布に包まれた四角い箱に入ったばあちゃんのお骨が置かれている。
 今、俺がお骨を持ち出して海に向かい、散骨をすればばあちゃんの望みをかなえることができるんだ。
 でも。
 それはもしかしてかあちゃんが言うとおり、とんでもなく常識はずれなことなんじゃないのか?
 家はなんだかんだ人の出入りが激しい。まわりに誰もいないなんてことが、これからもあるとは限らない。
 つまり持ち出すなら今だ。
 ここから海まで電車で30分くらい。チャンスは今しかない。今、やるしか。今! ばあちゃんの願いをかなえてあげられるのは俺しかいない。
 俺を見てにっこり笑ったばあちゃんのことが思い出される。
 行け!と俺の手足が動こうとしている。
 ……だけど本当にいいのか? 迷う気持ちが俺を押しとどめる。
 さあ、どうする? こんなとき、どうする?


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