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「Four Seasons ~月の響きをききながら~」

「green season ~春~」(4)

 
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「藤崎彩菜といいます。さきほど駅のホームではありがとうございました。(__)頂いた名刺にアドレスがあったので、メールしてしまいました。」
『どういたしまして。って俺は別に何もしてないけど^^;。もう大丈夫ですか? 会社には間に合いましたか?』
「連絡なしで遅刻してしまい、ちょっと怒られました。体調の方は大丈夫です。」
『お大事に。あまりムリはしないで。俺はこれからまた外回りです。』
「いってらっしゃい^^」


 遅刻をして、メールチェックのために頻繁に席をたつ彩菜を、恵美子は不審そうな顔で見ていた。
 いつもの彩菜なら、その視線が気になって仕方がないのだが、今日の彩菜はまるで気にならなかった。

 定時の十七時になり、恵美子はいつものように帰っていった。
 仕事も手につかず、一人でボーッとしながら携帯電話を手にして眺めていると、思いがけずメールが入った。
 ドキッとしながら、慌ててチェックする。裕弥からだった。
『外回りから帰ってきました。歩いていたら満開になっている遅咲きの桜の木を見つけました。さっきの駅のホームの裏側の公園です』
「そうですか! 見にいけたら行ってみますね」

 メールの返信をしてから彩菜は考える。
 ホームの裏側の公園……、わかるかな。桜はすぐに散ってしまうから早く見にいかないと。

 彩菜はその日、会社を出た後、朝、途中下車した駅で降りた。いつもより少し早めに退社できたが、二十一時はまわっていた。
 改札を出て、ホームから見ていた風景と反対の方向に歩いた。
 目指すものはすぐに見つかった。
 そこが公園だと気づくより先に、桜が目にとまった。一本だけ、大きな桜の木が花を満開にさせている。
 彩菜はその木に近付いていった。桜の木の向こうの夜空に満月が見えた。
 なんて見事な光景だろう。
 彩菜は思わず足を止め、目の前の絵に描いたような光景に見とれた。
 ざあ……っと、風が吹いて、桜の花びらが舞った。
 あ。
 花に気をとられて、気づかなかった。桜の木の向こうに人がいた。やはりその桜を見上げるようにたたずんでいた。
 あれ? もしかして……。
 彩菜は少しずつ、桜の木に近付いていった。桜の木の向こう側にいた人も、近付いていく彩菜に気づいて、彩菜を見た。
「あ」
 と、二人は同時に声を発した。
 そこにいたのは裕弥だった。
「驚いた」
 裕弥は言ってから、言葉を続けた。
「こんな時間まで仕事?」
 彩菜はこくんと頷いてから、
「ええ。毎日このくらいの時間になっちゃうんです。残業で……。今日は早いくらいです」
 とこたえた。
「大変だね。お疲れさま」
 暗くて表情はよく見えなかったが、その口調はとても優しかった。
「メールもらって、絶対見にこようと思ったの」
「ね、すごいでしょ。これ一本だけ咲いてたから。今年、桜を見てないって言ってたから、これはぜひ報告しなくちゃって思って」
「ありがとうございます」
 そんなふうに思ってくれた裕弥の気持ちが嬉しかった。
 また風が吹いて、桜の花びらが舞った。
「ああ、こんなに花びらが散ったら、花がなくなっちゃうね」
「今夜見に来てよかった。明日になったら、もう散ってたかも」
「うーん、そうかも」
 二人はどちらからともなく、顔を見合わせて、小さく笑い声をたてた。
「メシ、食べた?」
「ううん、まだ」
「近くにおいしいうどん屋さんがあるんだけど、良かったらどうですか?」
「あ、はい」
 とても自然な流れで、彩菜は裕弥と二人でうどん屋さんに向かうことになった。
 裕弥の後を歩き、すぐにお店に着いた。
「閉店間際かな」
 裕弥が先に店に入っていく。
「ギリギリ、大丈夫みたい」
 彩菜は裕弥のオススメのかき揚げうどんを注文した。
 さっきまで暗闇の中で表情がよく見えなかった裕弥と、明るい蛍光灯の下で向かい合って座っている状況にドキドキしていた。
「ね? おいしいでしょ」
 言いながら裕弥は、おいしそうにうどんをすすっていたが、彩菜はうどんの味がわからないくらい舞い上がっていた。でも、
「おいしい」
 と彩菜が言うと、裕弥が嬉しそうに笑ったので、彩菜も嬉しくなった。こんな楽しい食事は久しぶりだった。

 うちに帰ると母親が居間から顔を出し、
「お帰りなさい」
 と言った。
「毎日遅くまでご苦労さま」
 と言葉を添える。
「今日は軽く食べてきたから、食事はいいや」
 彩菜が言うと、
「そう。忙しそうだけど体調気をつけなさいよ」
 と母親らしい一言をかけた。
「お風呂入って、寝るね」
 彩菜は言って、自分の部屋がある二階への階段を上っていった。


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