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短編

ヒルガオ

 
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「僕がすすめるものばかりじゃなくていいんですよー」
 お弁当屋さんの愛想のいいお兄さんが言う。近所にあるこのお店に、わたしは毎日のように通っていた。
「好きなものとか、食べたいものとか、あるでしょう?」
ちょっと考えたけれど思い当らなかったので、わたしはいつも通り、『本日のオススメ弁当』を買った。

 家に帰って、地元のケーブルテレビを見ながらお弁当を食べた。今日のメニューはミックスフライだ。
 コロッケを一口かじった時、突然、電気が消えた。停電? テレビも蛍光灯も消え、薄暗がりの中でぼんやりしていたら、ふと、自分が別世界にいるような錯覚に陥り、頭の中が流れ込んできた疑問で満たされた。

 わたしは今まで自己主張をしたことがあっただろうか。
 小さい頃から、女の子らしいという理由でピンクの服ばかり着せられた。数字に興味があったが、文才がありそうだという教師のアドバイスで、文系の学校に進学した。親の紹介で就職し、上司の紹介でお見合いした相手と結婚をした。妻には家にいてほしいと夫が言うので、わたしは専業主婦をやっている。中々子宝に恵まれず、姑の勧めで不妊治療を受けている。
 愛されるためには相手の期待にこたえなければならないのだ。

 その時、部屋の蛍光灯がつき、テレビが映像とともにけたたましい音を出し始めた。「一部の地域で停電がありました」というテロップが出ている。
 戻ってきた世界は、まるでモノクロがカラーになったかのように、今までとはちがうものに感じられた。
 目の前の食べかけのお弁当を見る。揚げ物なんて大嫌いだ。ピンク色も嫌いだ。外で仕事をしたい。勉強をして資格もとりたい。つらい不妊治療を続けるのもうんざりだ。わたしは立ち上がって、ピンクのエプロンを脱ぎ捨てた。もう条件付きの愛情なんていらない。
 一着だけ持っていた紺のスーツに着替え、バッグに財布と貯金通帳、印鑑を投げ込んだ。
 部屋を出ようとして、気配を感じて振り向くと、いつの間に根付いたのか、ベランダに昼顔が咲いていた。その穏やかで儚げな存在に、一瞬足を止めて、また歩き出す。
 ばいばい。





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