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短編

面倒くさい女

 
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「お願いがあるんだけど」
 十年前、入社したての頃、同期の小柳カナエに声をかけられた。明日までに揃えなくてはならない資料がまとまらないので、手伝って欲しいというのだ。カナエがあまりにも切羽詰まった様子だったので、帰ろうと思っていたところだったけど、手伝うことにした。二時間くらいかけて資料まとめが終わり、カナエが、
「ありがと! 山口君って頼りになるぅ!」
 と天使のような笑顔を見せた時、面倒くさそうな女だなと思った。甘え上手は良心をくすぐり、僕は自発的に献身的になってしまうのだ。そしていつの間にか、そいつのペースになって振り回される羽目になる。
 こういうタイプには近づかないようにしようと思っていたのに、その後カナエは何かにつけて僕を頼ってきた。仕事のミスは僕との連帯責任になり、上司に怒られる役は僕で、カナエが残業の日は手伝うために一緒に残った。暗い夜道は危険だからと反対方向に帰るカナエを送り、その道すがら恋の相談役になった。内心、自分が都合よく扱われていると感じて不愉快だったが、そのたびにカナエは、「山口君、頼りになるぅ!」と無邪気に笑い、僕は「まあ、いっか」って気持ちになった。
 カナエは五年前、よく話を聞かされていた彼と結婚し、僕は同僚代表としてスピーチをした。僕のわざとらしい祝福の決まり文句にカナエは瞳を潤ませ、それを見て、やっぱり面倒くさい女だなと思った。
 ところが半年も経たないうちに、寿退社したカナエは僕を呼び出し、彼が浮気をしたので離婚するかもと言い出した。思いとどまるようにと説得したが、数ヶ月後には離婚が成立した。「アドバイスしてもらったのに、ごめんなさい」と、カナエは肩を震わせ涙ぐみ、僕は再就職先探しまで手伝うことになった。仕事を始めてからも、カナエは何だかんだと僕に連絡をしてきた。
 気付いたらカナエは僕の隣にいて、僕らは一緒に生きていた。
「ここが、本当の私のポジションって気がするぅ」
 カナエは甘えた声を出し、僕は彼女を幸せにしたいだなんて思ってしまうのだ。
 ああ、面倒くさい。うまくのせられているだけなのに。彼女が泣いたり笑ったりすると、周りからはクールと言われている僕が、妙に善人になってしまう。なんて面倒くさい女なんだ。面倒くさい、面倒くさい。でも、そんな面倒くささが何故か心地いい。





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