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 ←面倒くさい女 →正解・アオキ編
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正解

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 ←面倒くさい女 →正解・アオキ編
 小学生の頃、友達だったアオキは、子供のくせにクールなヤツだった。みんながゲラゲラ笑っている時にも一人でニヤリとしているような。
 俺はアオキとは正反対のお調子者だったけど、ヤツとは気が合った。冷めてるように見えるのは照れ屋だからで、本当は優しいヤツだってこと、俺は知っていたからね。アオキのオヤジは偉い人らしかったけど、そんなのどうでもよかった。
 連続で忘れ物をして毎日のように先生に怒られていて、その日は体操着を忘れて、もうヤバイって思った俺に、アオキは何も言わずに自分の体操着を貸してくれた。ヤツは体育の授業をバックレた。

 放課後、一人で帰るアオキを追い掛けた。何かお礼がしたくて、でも俺が出来ることなんてそんなになくて、財布からナケナシの千円札を出して差し出したけど、アオキはそっぽを向いていた。仕方がないから俺は得意だったタレントの物まねをやった。やり終えて見ると、アオキはニヤリとしてボソッと言った。
「正解」

 その後、俺は両親の離婚のため転校した。俺は母親に引き取られ、再婚相手の男には邪魔者扱いされた。中学生になってからはグレて問題ばかり起こし、母親を泣かせた。どうにか入った高校は中退した。家を出て辺鄙な町で仕事を見つけ、住み込みで働き始めたが、勤務態度が悪いとクビになった。

 夢も希望も見えない、帰る場所もない、目指す場所もわからない。時間の感覚もなく、田舎道をさまよっていた。どうしてこんな人生になっちまったんだ。子供の頃の陽気な俺はどこにいっちまったんだ。
 楽しかった頃を思い出していたら、アオキの顔が浮かんできた。転校してからもヤツからは年賀状が届いていた。俺が返事を出さなくても、毎年律義に。実家を出てからは俺のもとには届いてないけど、今でもヤツは実家に送り続けているのだろうか。どうしているだろう。進学していれば、大学生になっているはずだ。
 俺は携帯電話を取り出した。年賀状に書かれていたアオキの番号がメモリに入っていた。俺は初めてその番号に発信した。アオキと話すのは転校して以来だ。
 呼出音の後、ヤツが出た。
「俺」と言うとアオキは「ああ」と言った。
 言葉が続かなくて、でも大人になったアオキの声を聞いたら泣けてきた。俺はなんでこんなところに一人でいるんだろう。
「死にてえ」俺は呟いて、その場にしゃがみ込んだ。
 俺のすすり泣く声が聞こえているはずなのに、アオキは何も言わず、だけど電話は切られなかった。
 ひとしきり泣いたら、気持ちが少し軽くなった。見上げた夜空に三日月が見えた。俺は鼻をすすりながら掠れ声で言った。
「久しぶりにおまえに会いに行こうかな」
 ちょっと間があってから、アオキの声が聞こえた。
「正解」
 ヤツがニヤリとしたんじゃないかって、気がした。





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