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短編

「リアル」

 
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 ある女優の半生が、再現ドラマになって放送されていた。同棲している彼は、食い入るように画面を見つめている。仕方ないので、私も頬杖をついてテレビに見入った。

*************


 女優になりたかった彼女にチャンスが訪れたのは、高校卒業を控えたある日のことだった。東京のタレント事務所のイベントが彼女の住む町であり、スカウトされたのだ。
 厳しい両親は娘が芸能界に入ることを許さず、彼女は家出同然で故郷を飛び出した。

 現実は厳しかった。セクシー歌手としてデビューしたが、露出度が高い衣装を着て、音程をはずしながら歌う様子は奇異でしかなく、アルバムは全く売れなかった。

 半年後、事務所が倒産した。手当たり次第オーディションを受けたが、いい結果は得られなかった。そんな彼女を救ったのは、デビュー時にお世話になったカメラマンだった。「一緒に暮らさないか」と言われ、住む家もなくなっていた彼女は、彼のアパートに転がり込んだ。プロポーズされたが、女優になる夢を捨てきれなかった。彼は理解してくれ、二人は入籍はせず一緒に暮らし続けた。

 彼女は地道に経験を積み、少しずつ端役をもらえるようになった。バラエティ番組で、デビュー当時の映像が流されると、知名度は一気に上がった。地味な役を演じている彼女と、露出度が高い衣装を着て歌う彼女のギャップがおもしろがられたのだ。仕事は増え、今や名脇役と呼ばれるようにまでなった。
 カメラマンの彼は「女優の恋人」として知られるようになった。

*************


 そこで再現ドラマが中断し、CMが流れた。
「感動的だなあ」
 息をつきながら彼が言う。
「どこが」
 と私。
「そりゃ、夢を追う素晴らしさ、彼の愛の深さだよ」
「こんなの成功者の露悪趣味じゃない」
 私は言い捨てて、立ち上がった。

*************


「カーーーット!」
 監督の声が響く。
「いいよ、ルリちゃん、すごくリアルだったよ」
「ありがとうございます」
「じゃ、お疲れ様」
「お疲れ様でした」
 私はスタッフ一人一人に声をかけながら、スタジオを出た。

*************


 自宅のマンションに帰って鍵を開ける。
「お帰りー」
 コースケが声をかけてきた。
「明日、田舎のご両親が来るんだろ? 俺、いい印象持ってもらえるかな」
「大丈夫よ、コースケも有名人なんだし」
 私はバスルームに向かった。鏡と向き合う。演技がリアル? 監督の言葉を思い出す。
「――リアルなのよ」





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